症例報告

vol.3

ウイズダム実践に基づく外来インスリン導入の指導の試み

トータルライフクリニック本郷内科 H.Y氏

【はじめに】

当院では、生活指導の際に、「因縁果報ウイズダム」に基づき、「因」と「縁」を整えて指導を行っている。今回、外来におけるインスリン導入の7症例についても、担当看護師は「因縁果報ウイズダム」に基づき、「因」と「縁」を転換し指導に臨んだ。それにより、「因縁果報ウイズダム」の取り組みがインスリン導入時の指導に有効であると実感したので、特に導入が困難と思われた症例について報告したい。

【症例1 Aさん 】

60代、男性。30代後半より糖尿病を指摘される。当院へは、7年前に初診。以後、食事・運動療法や服薬にて治療を行うが、会社の社長で、多忙で宴会も多く、食事・運動療法の継続がなされず、また、受診時に検査を拒否する、「待ち時間が長い」と帰ってしまう、服薬を自己判断で中断する等があり、HbA1c(Hemoglobin A1c)7.8~9.4%とコントロール不良が続いた。 2004年9月に、主治医がインスリン導入が必要であることを伝えたが、導入に拒絶的なため、治療・指導に苦慮していた。2005年1月以降は、HbA1c9.0%以上が続き、同年7月に主治医が再度、病状に関して患者さんと奥さんに説明し、インスリン導入の同意を得た。

【経過】

筆者は、担当看護師として、インスリン導入の指導にあたって「因縁果報ウイズダム」に取り組んだ。 そして、「因」としては、「難しい。できれば担当したくない」と不安で引き受け切れないでいることを意識化し、「責任を持って、最後まで、一つ一つ確実に引き受けます」と「因」の転換に努めた。 「縁」としては、指導時の様子をカルテに記載して主治医に報告し、何かあればすぐに対応できるようにした。奥さんにも初回指導時は同席していただき、インスリン導入について分かりやすく説明するとともに、疑問や不安な点はいつでも電話相談にのるなど、サポート体制を整えた。

【結果】

その結果、インスリン導入がスムーズに行われただけでなく、患者の闘病姿勢に変化がみられるようになった。インスリン自己注射やSMBG (self-monitoring of blood glucose)に対して積極的に取り組み、食事・運動療法についても工夫をして日々実行するようになり、現在HbA1c7%台となっている。そして、今後の目標を、「HbA1c 6.0%台にコントロールをつけること」と定めている。 また、「1年前に会社を息子に引き継ぎ会長になったが、自分には息子を社長に育てるという仕事が残っている」と語り、仕事を含め日常生活にも充実感を抱いて、いきいきと過ごされている。

症例03

【症例2 Bさん 】

60代、男性。20年以上前から糖尿病を指摘されていたが、自己判断による食事療法のみで通院治療をしていなかった。インスリン導入の結果、現在、良好なコントロールが得られている。

症例03

 

【考察】

今回、演者は、インスリン導入が確実に行われ病状が好転することを目的として、「因縁果報ウイズダム」に取り組んだ。患者さんにとって解決されるべき問題点を挙げ現状を明らかにし、さらに、解決を阻む演者の「因」を意識化して転換を図り、「縁」となる同志やシステムを明確にし、協働体制を創って具体的にシステムを整備した。
それにより、かなりの困難が伴うのではないかと思われた2例についても、スムーズにインスリン導入を行え、コントロールが改善しただけでなく、患者の治療姿勢が意欲的になった。
もし、「因縁果報ウイズダム」に取り組まずにインスリン導入を行ったら、演者は事態を引き受けきれず、個別性を踏まえた「縁」の整備もなく、インスリン導入に支障を来したのではないかと推察される。