症例報告

vol.4

肩関節周囲炎と腰痛の繰り返し発症が「つぶやき」の発見により軽快した1例

H治療院 H.S氏

【はじめに】

一般に、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)や腰痛は加齢や無理な労作によって発症し、一定期間で小康状態に至ることが多い。今回、五十肩と腰痛を合併し、一時改善傾向をみせても再び悪化することを繰り返して軽快しなかった患者が、演者の傾聴により、人生を突き動かしている情動を言葉にした「つぶやき」を発見することによって、軽快に至った1例を経験したので報告する。

【症例】

2004年9月6日初診。48歳、女性、既婚(三児の母)。既往歴:2004年7月28日、子宮及び右卵巣摘出手術(病名不詳)。家族歴:特になし。主訴:左肩関節痛。現病歴:2004年7月頃より左肩関節の痛みが持続し、八王子の外科にて五十肩と診断された。

【経過】

治療を2回程、継続すると痛みは改善するが、2週から3週すると職場での無理な労作や自転車での事故などで増悪することを繰り返し、関節可動域に制限を生じていた。病状が徐々に悪化するので、演者は、2005年7月より傾聴しつつ、共に「内を見つめる」ことに努めた。その中より、「実家に帰る時は、『さすが、○○家の○○だ。大したもんだ』と言われるような自慢できるものがないと帰れない。『大したもんだ』と言われて初めて一族の一員になれる」との話から、「『大したもんだ』でなければ駄目」という「つぶやき」があることが分かった。そして、家庭の中で自分が「大したもんだ」となれないのは、夫や子どもが悪いと考え関係を長年悪化させていたこと、職場で「大したもんだ」と思いたいが故に上司と対立し無理をしていたことが、自覚できるようになった。そして、「自分が『大したもんだ』となるより、人が元気になってくれたほうがうれしい」と想いを転換した。それ以来、家庭や職場での人間関係も変わり、職場が本当に楽しく、家庭も明るくなったと語るようになった。同時に、肩の痛みや運動制限、および繰り返していた腰痛も軽快した。
現在は、日常の仕事に支障や痛みはなく、再発はない。
また、肩関節可動域閾は、以下のように改善した。

グラフ05

 

【考察】

今回、五十肩と腰痛の悪化と改善を繰り返していた患者において、傾聴に努め、患者が「つぶやき」を発見することによって、病状が軽快するにとどまらず、長年問題だった家庭や職場での人間関係が転換され、「肉体的痛み」のみならず「精神的痛み」「社会的痛み」の癒しに繋がったように考えられる。治療者が、傾聴に努め、患者の「つぶやき」の発見の「縁」となることは、患者のトータルな癒しにとって、大切な鍵の一つだと思われる。